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「気血水」についてのお話

VOL.39
2018.07

こんにちは。院長の新です。

 

今年の夏は、豪雨に地震、猛暑と、例年以上に特に厳しい季節となっている方も多いのではないでしょうか。被災に合われた方々が、1日も早く日常を取り戻せますようにと心よりお祈りいたします。

 

サッカーファンの私の中で、この夏の記憶に残るのが、FIFAワールドカップサッカーロシア大会です。日々、暗いニュースが多く気持ちも落ち込み気味な中、日本全国を明るい気持ちにしてくれたと思います。特に日本代表の大活躍劇は、本当に素晴らしかったです。どの国のチームの試合も大番狂わせが多く、はらはらわくわくどきどき。見逃せない試合ばかりでした。観ていて、胸を打たれました。感動をありがとう!

 

時差の関係で、連日寝不足続きでまだ調子が戻っていません。患者さまも私と同じように、寝不足で不調を訴えられる方も多いのですが それとは別に「なんだかだるくて、体調がすぐれない。」という方も今年は多いように感じます。この症状は、今年だけに限らず、この時期、特有の気圧の低下が影響していると思われます。どこが悪いというわけではないけれど体調がすぐれないという方、次のような症状がある方には、漢方薬の服用をお試しいただいています。食欲不振、倦怠感、疲労感が抜けない。夏バテ、クーラー病の症状とも酷似していますね。今月は、そんな症状にお悩みの方にぜひとも読んでいただきたい内容です。前置きが長くなりましたが、今の時期に役立つ情報として、漢方について少しお話しいたします。

 

漢方医学には、「陰陽虚実」「表裏寒熱」「気血水」「五臓六腑」など、聞きなれない言葉があります。見てお分かりだと思いますが、「陰と陽」、「表と裏」など相反する言葉がとても大切なのだと教えてくれています。人間は、男性と女性と言うように、まさに異なる2つの性別により分かれています。また、太陽と月、天と地など、実は私たちの周囲には多くの相反するものがバランスを上手に取りながら作り上げている世界と言えるでしょう。この自然の摂理を判断基準に取り入れ、診察し生薬を処方することを漢方医学と言います。沢山ある漢方医学の中から、今回は、この時期に役立つ「気血水」についてお話いたします。

 

「気」は、目には見えません。しかし、生命の源、またはエネルギーと言っても過言ではないくらい大切な要素の一つであり、生き物には必ずある、とても大切なものです。この「気」というものは、現代では、見えないがゆえ胡散臭い、なんだか怪しいと軽視されがちです。オカルトっぽいものだと誤解されている方もいるかもしれませんが、実は気の大切さをどの方も理解しているようにも感じます。例えば「元気」という言葉は、元の気と書きます。元の気がみなぎっていることを元気と言うんですね。合気道や武道は、呼吸とともに「気合い」をコントロールします。他にも、気弱になる、陰気など、「気」が大切なものとわかる言葉が沢山あります。よく気を巡らすといいますが、「気」は、血と水を全身に巡らせ各臓器を順調に機能させます。

 

「血」は、皆さまよくご存じの赤い血液です。血液の役目は、栄養と酸素を全身に運びます。

 

「水」は、それ以外の液体で体を潤してくれます。

 

この「気血水」がバランスよく保たれて、はじめて健康ということになるのです。漢方医学は、それらのバランスを見ながら、足りないところを補い、また過剰にあるところを取り除くという医療と言えるでしょう。

 

梅雨の時期、天候の影響が出やすい症状に“むくみ”があります。特に女性の方には、この症状の自覚症状が出る方が多いと思います。 むくみの原因となるのは、立ち仕事や月経前、アルコール、水分の飲みすぎなどです。漢方医学では、これらのことを「水毒」が原因と考えます。もちろん腎臓や心臓、甲状腺などの病気も考慮する必要はあります。これらの病気を除外した上で、むくみがあるのなら、それはずばり「水毒」が原因と言えるでしょう。つまり、水の滞りが原因です。 むくみの症状がある患者さまによくある誤解。 ‘’水分の取りすぎでむくんだはず。だから、水を飲むのを控えてました!‘’ この時期、大量の汗をかきますので、水分補給をしないのは命とりです。のどが乾いたら、我慢せずに水分補給をしてください。健康な体であれば、水は、いくら飲んでも順当に体中に巡ります。不必要なものを排出できれば、いくら水分を取りすぎても何ら問題はありません。

 

ですが、何らかの要因によりバランスが崩れ、気の巡りが滞ると体内の水分の調整が上手にできなくなり、排出機能が低下します。水が滞っている状態からくるむくみは、めまい、動悸、倦怠感などを引き起こします。そうした症状に処方する生薬は、水を排出するものになります。西洋医学の利尿剤と違うところは、過剰な水分は、排出しますが、水分が不足している時は逆に潤してくれる点です。

 

「水毒」の症状に適した漢方として「当帰芍薬散」や「五苓散」などがあります。同じ「水毒」の症状でも処方する漢方は、患者さまにより変わります。多くの漢方から、症状だけでなく各患者さまにあった生薬を選ぶ。漢方医学の大切な点は、患者さまと対話し、性格や生活習慣などをお聞きすることです。私が常日頃大切にしている点です。

 

体調がすぐれない方、毎年この時期にめまいがするなどでお困りの方は、一度漢方を試してみてはいかがでしょうか?漢方を取り入れて元気に夏を越しましょう。

 

院長 新  浩一

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