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診察所見(脈診、舌診、腹診)について

VOL.40
2018.08

こんにちは。院長の新です。
残暑お見舞い申し上げます。

 

今年も早いもので、お盆が過ぎ、秋の虫の声が聞こえだしました。まだ今年も数か月ありますが、平成最後の1年の印象は、日本全土において自然災害の多い年と記憶に刻まれるような気がしております。金沢だけでも、年明けの2月の北陸中心の大雪に始まり、記録的豪雨。そして、夏を迎える前から真夏日が連日続き、夏は40℃を越える酷暑でした。さらに、今では台風上陸と全く気候が落ち着く様子をみせません。これから雪が降る季節を迎えます。北陸地方のみならず、日本全土において、これからの数か月も十分に気を付ける必要がありそうです。備えあれば憂いなし。天災は、予測不能なうえに誰かのせいにできません。自助努力を怠らず、日々日常的にできる限りの予防をするのが良いですね。病と似ている気がいたします。

 

さて、前置きが長くなりましたが、前回に引き続き、漢方薬について私見を中心にお伝えしようと思います。私が、漢方薬を処方する時は、その人その人の体質や症状から「証」(各人なりの特徴)をとらえて処方に生かすようにしています。「証」を見つけるためには、問診の他に、診察所見(脈診、舌診、腹診)を活用いたします。

 

「脈診」は、腕の見せどころとでも言いましょうか。職人の域。実に難しい診察所見になります。特に風邪を中心とした急性疾患によく用いています。抗病反応(病気を跳ね返す体力)を持っているか否かなどを推測し、麻黄剤(葛根湯・麻黄湯)を使うか決めます。

 

「舌診」は、その名前の通り、舌を見るだけなのですが、 むくんで歯形がついているようなら、めまい、頭痛、むくみなどの「水毒」体質(体液の偏りがある)。舌の裏も含めて不健康な色をしているようなら、腹痛、月経異常などの「瘀血」体質(微小血液循環障害がある)。黄白色の舌苔は、何らかの感染症によって胃腸機能低下していることを教えてくれます。

 

私は、消化器内科のはしくれですので、やはり「腹診」が最も興味深く、奥深いと感じています。何故かと言うと、腹部の病気がなくても、お腹の症状を訴えていなくとも、色々な所見が見て取れるのです。特に慢性疾患においては、ええ!!こんな疾病まで、お腹で分かるの?と驚かれるはずです。

 

例えば、精神疾患である、うつ病、自閉症、パニック障害。バランスの乱れからくる自律神経失調症、更年期障害。 重症ないしは難治性の花粉症、アトピー性皮膚炎、発達障害、気管支喘息、蕁麻疹などのアレルギー疾患。さらには、風邪やインフルエンザにかかりやすい体質か否かなど、易感染性などまでも、腹診により分かります。

 

お腹には、沢山の情報がある!! 私も何度となくコラムでもお話させて頂いている腸内環境のお話ですが、改善をすると、あらゆる病気を未然に防げると巷でも言われています。お腹の中は、実は脳のように解明されていない何かが沢山あるのではないかと、診察室で想像しております。漢方を勉強すると、こうした気づきが沢山あるのです。

 

改めて、4000年の歴史ある漢方に神秘的なものを感じずにはいられません。

 

院長 新  浩一

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